『The Front Line Covers』を聴いて

 “初心忘るべからず”という言葉があるけれど、時が経って、慣れてくると気付かないうちに初心を忘れがちになってしまう。だから、“自分が追い求めていたモノは何だったんだろう?”と思い直すことは必要なことなんだと思う。もちろんこのことは自戒の念を込めて。

 さて、『The Front Line Covers』の話。やっぱり初期の曲は誰が何と言おうといい。この頃の曲を聴きまくって I’ve を今まで追っかけてきたんだからなおさらのことだ。このセルフリミックスアルバムはクリエイターの面々も“あの頃の気持ちに戻って”リミックスしたんだと思う。もちろん自分にも言えることだけど、完全に昔の自分に戻る事なんてできないし、機材なども違っているから音は“今の音”になっているけれど、気概は曲を通して伝わってきた。
 それと、『The Front Line Covers』の各曲の編曲者を見ると、全てではないにしろ曲が出来たいきさつが感じられて面白い。気になった曲だけ感想を含めて書いておきたい。

 「RIDE」。原曲からして、普段とは違う音源のドラムセットを使って作られていた。イントロのギターなど、高瀬氏が当時やり残したことも含めてのリミックスなのだろうか。
 「季節の雫」。今でこそ作編曲の第一線で活躍するクリエイターだが、当時は中沢氏は編曲者としては活動していなかった。その中沢氏がアレンジする『季節の雫』を聞けるということは感慨深い。
 「Days of promise」。中沢氏がI’ve での編曲を担当したいちばん最初の曲。この曲の歌詞は C.G mix 氏と縁が深い SAYUMI 氏が書いているので、その繋がりで見ると面白い。
 「Birthday eve」。浅倉大介風の曲で作って欲しいと依頼されたものの、高瀬氏は浅倉大介氏の曲を知らなかったため、その方面に詳しい C.G mix に根ほり葉ほり聞いて出来たのがオリジナル。そんな C.G mix 氏のアドバイス無しにはなし得なかった曲を C.G mix 氏が自らアレンジしているところが聴きどころ。
 「I will…」。中沢氏の I’ve での最初に書かれた曲。当時からやさしく穏やかな感じが感じ取れる。今回の編曲は C.G mix 氏が担当。
 「Two face」。唯一の中沢氏が作詞に参加している曲。当時からカッコイイ曲だったけど、尾崎氏のギターも加わって間奏のボイスも新しくなって今を感じさせつつもあの頃を思い出すアレンジ。
 「One small day」。当時は当たり前だった、ボーカル以外は全て高瀬氏が担当している曲。この曲は折戸氏も気に入っていると当時の雑誌インタビューで述べていた。高瀬氏らしい優しさに満ちあふれた曲。
 「Belvedia」。オリジナル発表時から高瀬氏が雑誌などのコメントで「お気に入りの一曲」と発言していて、当時同時発表していたユーロビートコンピ『EURO 3』にも「TONIGHT」の曲名で使われていた。Remix が同時発表されているが、今回も高瀬氏が編曲を担当しており、この曲はゆずれないという氏の思いが伝わってくる。
 「Dream to new world」。力強くい歌詞に、当時のユーロビートのノリが生きている曲。これを中沢氏が、新たに Rap を加えてアレンジ。今こうして再びこんなアレンジに巡り会えるとは思わなかった。

 総じて言えることは、自分は高瀬氏のキャッチーなメロディーに自分の好きな曲調、そしてなにより希望に満ちあふれる力強く、そして優しさに満ちあふれる点に惹かれてファンになったのが原点。そこから色々な輪が広まって今こうして自分がここにいる。
 自分たちが忘れていたもの、それをもう一度思い出してこれからも活動して欲しい。偉そうなこと言ってゴメンナサイ。

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